【想い】なぜ絵を描くのか(2021年11月グループ展展示)

作品

グループ展が決まってから
ずっと頭の中にある問いだ

人生で絵を描きたいとも思っていなかったし
描かなきゃいけないとも思っていなかった
今でも
 
別に私は絵を描かなくてもいい
絵を描く意味なんてない
今まで通り秘書業務をすればいいじゃん
今までだって幸せに生きてきたんだから
絵を描かなくたって幸せに生きていける

落ち込んだ時はそんなことすら思う

でも一方で
絵を描くという手段を覚えてから​
描きたくなる自分がいるのも事実だ
描かないと昇華されない何かがあることも
 ​
日々色々なことを感じる私だからこそ
頭の中に入ってきた沢山の情報を
心の中に溜まった色々な感情を​
昇華させる必要がある

いつだって私の頭と心は忙しい



私は茶道を習っている

一服のお茶を点てるのに
なぜ一見無駄と思えるような動きを
あれだけするのか

はじめは
お稽古しても何が何だかさっぱりわからない
これは右手?左手?と
操り人形のようにギコチナイ
慣れてきたと思ったら
季節も変わりお道具も変わる

いつになったら
すらすらお手前できるようになるのだろう

はがゆさを感じながら
それでもひたすらお稽古を繰り返す

そしてある時 気づいたら
ぎこちなかった手がすーっと動き
自分の成長を実感する時がある

無駄と思えていた動きが
ふとした瞬間 点と点でつながり
その意味と理由の深さに気づく時がある

回を重ね 年数を重ねていくことで
初めて分かることがあり
自分が見えていた世界は
ほんの一部に過ぎなかったことに
気づかされる時がある

人の成長は 目に見えるものだけではない
その人の中で奥へ奥へと根を張り
土台を作っていく時期がある
いづれ大きな花を咲かせるために

自然にも季節があるように
人生にも季節がある
なんてことはない ただそれだけのこと

茶道には人生の摂理が詰まっている
終わることのない 気づきの繰り返しが
私の世界を広げてくれる

そして
お手前するためには
「心をここに置く」必要がある茶道の時間は
頭の中がいつも忙しい私にとって
貴重な「無」になる時間なのだ




「なぜ絵を描くのか」

という問いは
自然と私を 自分の内側へと向き合わさせた

時に見たくない自分に直面することもあったし
新しい自分にも出会えた

そして 昔から変わらない自分もそこにいた
自分が大切にしたい世界がそこにあった
暗闇があるから光の存在を認識できるように

陽と陰 光と影 表と裏
喜びと哀しみ 強さと弱さ
どちらもなくてはならないもの

その相反するものを包みこむ 認め合う世界

もしかしたら
ワタシの中から湧き出る表現したいものは
この世界の一部なんじゃないだろうか

そんなことをふと思った

その答え合わせをするかのように
私はまた キャンバスにむかう

 2021.11.6 堀井 由香

*2021年11月グループ展展示文章
*文章下地は「蝦夷和紙」を使用。台風によって倒れた北海道大学ハルニレの木から作られたもの。